2022年の製図課題の発表もされ、いよいよ製図試験の勉強が本格的に始まってきますね。
今年が初受験の方はエスキスとはなんぞやと思っているかもしれませんが、本記事でエスキスについて解説していきますので、空き時間にでも読んでいただけると嬉しいです。
2回目、角番の方も他の人がどうやってエスキスをしているのか知ることができるので、そこから自分のエスキスに活かせるものがあれば幸いです。
それではどうぞ!
こんな方におすすめ
- 製図試験を初めて受ける
- エスキスが苦手
- 他の人のエスキス手順を知りたい
Contents
【初受験の方向け】エスキスとは??
一級建築士試験で言うところのエスキスとは、製図用紙に書いていく前にプランを固める段階のことを言います。
エスキスを元に作図していくので、このエスキスが間違っていたり、抜けている部屋があったりすると作図中に修正するのはかなり難しくなってきてしまいます。
試験問題の文章の中から重要事項を漏らさずに抜き出して、エスキスに反映させていくのですが情報量が多すぎて、最初は漏らさずに条件を書き出していくことだけでも難しく感じると思います。
本試験では製図用紙とは別にエスキス用のA2サイズの紙をもらえるので、その中でプランを組み立てていくことになります。
まれにエスキス用紙に配置図が書いてある場合があるので、A2サイズを丸ごとエスキスで使用できない可能性もあります。
エスキスにかけることができる時間
試験時間が全部で6時間30分ありますが、エスキスにかけられる時間は大体2時間程度と言われています。
理想の時間配分は以前から下のように言われています。
- エスキス:2時間
- 記述 :1時間
- 製図 :3時間
- 見直し :30分
最近は問題文の文章量も増え、考えなければならない事項が増えてきているのでエスキスが2時間で終わらないような場合も増えてきました。
その場合は製図時間や記述時間を短くするか、見直しの時間を削るしかないので、エスキスだけに時間を取られないよう注意が必要です。
ポイント
エスキス時間は約2時間!
僕が合格した時のエスキス手順
初受験の時は自分の中でエスキスのやり方を確率することができずに試験に臨んでしまいましたが、2回目の受験時には3月からの勉強で自分に一番合っていると感じるエスキスの方法を見つけることができました。
1|問題文にチェックを入れながら読む
まずは問題文を正確に読み取っていくことが重要です。
当たり前ですが、正確に読み取れないとその後のエスキスがどれだけうまく行ってもランクⅣになってしまう可能性が高いので、ちゃんと一つ一つチェックしながら読んでいきましょう。
資格学校によってチェックの付け方は色々あると思いますが、僕が実践していたのは下のように色分けしてのチェックです。
- 数字:黄色
- 重要事項:青
- プランに関わる事項:ピンク
- 必要な部屋、モノ:オレンジ
- 例年と違う出題のされ方:赤マーカーで丸
問題用紙がカラフルになっていくので好き嫌いがあると思いますが、後から見たときにすぐに探している事項を見つけられたりするので便利に使ってました。
また、オレンジでマーカーした部分が必要な部屋や家具類になってくるので、作図後の見直しでもチェックリストとしてそのまま使用できるというメリットもあります。
過去問や資格学校の問題をずっと解いていると、毎年ここの文章は同じだな、道の切り開きは毎年変わらないな等、変更が加えられにくい部分が出てきます。
そのような場所こそ、本試験では書き方を変えて出される可能性があるので、問題文のチェック時に見つけた場合はわかりやすくグリグリと赤丸で囲むようにしています。
ちなみに令和3年の試験では、毎年記載のあった床面積の合計が問題文の中に書かれていませんでした。
容積率は記載があったので、自力で計算して求めなければならないようになっていたのです。
計算自体はなんて事ないのですが、いつも書いてあったものが書いていないとそれだけで焦って正常な判断がつきにくくなってしまうので、間違えてしまう人や普段しないミスをしてしまう人も多かったのではないでしょうか。
このように本試験では、絶対にいつもと違う部分を出して受験生を焦らせにくるので、引っかからないためにもいつもと違う部分は赤丸で囲って見やすくしておくといいと思います。
ポイント
いつもと違う記載には一番目立つチェックを!
問題文のチェック方法についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
2|問題文に書いてある条件を書き出す
問題文にチェックを入れ終わったら、条件をエスキス用紙に整理していきましょう。
条件だけを羅列して行ってもいいのですが、僕は簡単な四角を書いて敷地と建物に見立て、その中に条件を書き入れていくようにしています。
例えば、南に面して住戸を配置と問題文に記載があれば、四角の南側(下側)に住戸と書いておくなどです。
この時に注意したいのが、問題文に書いてある以上の条件を自分でプラスしないと言う事です。
問題文には住戸は日照に配慮すると記載があるだけなのに、住戸だから当然南側に配置だろうと思い込みで条件を厳しくしてしまうと、エスキスの難易度が格段に上昇してしまいます。
本来は東や西に住戸が向いていても良くても南側だけに収めようとすれば当然ですよね。
また、合わせて敷地条件も書いておくと、どの方角が条件がいい方角か分かりやすくなります。
南側に高層建築物があれば、必ずしも南が一番条件のいい方角ではなくなってしまうので、気をつけたいポイントの一つです。
さらに言うと、方角が斜めになっている場合(図面上が北でない)もあるので、チェックを忘れずにしましょう!
ポイント
思い込みで条件を勝手に追加しないように注意!
3|法令上の制限の確認(建ぺい率、建築面積、高さ制限など)
問題文記載の条件整理が終わったら、建ぺい率や建築面積の計算をしていきます。
やり方は色々あると思いますが、僕の場合は下のような順序で計算していきます。
写真の計算の隣に書いてある①〜⑤の数字は下記の①〜⑤と対応しています。
①斜線制限からどれだけセットバックしないといけないか。
この時に建物の高さは1フロアの階高3.2m〜4mとして計算しています。
(階高の設定は用途により異なるため幅を持たせています。)
②敷地にいれることができる最大建築面積を考える。
敷地に入れることができる最大建築面積は斜線制限のセットバックがある場合にはその値を採用し、無い場合は道路側が3m、隣地側が2mセットバックと一律に設定して計算しています。
③建ぺい率から建築面積の上限を求める。
大体の場合が②で求めた建築面積を超えてしまうので、その後のスパン割りの際に少し小さくするなどの捜査を行なってやる必要がありますが、この時点ではMaxでは建てられないんだなと思っていれば大丈夫です。
④1フロア当たりの最大床面積を算出。
問題文記載の床面積の合計に、屋上庭園や吹き抜けの面積を足し、余白として100㎡だけ引いてから、階数で割ると1フロア当たり何㎡まで床面積を大きくできるかが算出できます。
この数字と②、③でも止めた建築面積の上限とを比較して、④の面積の方が小さければ問題ありませんが、④の面積の方が大きい場合は床面積の合計の下限に近い値で建物を計画しないといけないので注意していないとすぐに面積オーバー(=ランクⅣ)になってしまいます。
⑤これまでの面積の計算からざっくりとスパン割りを考える。
基本のスパンの長さを7mとし、縦横7mのスパンで設定した場合にどれだけ余るのか、または足りないのかを計算します。
設計条件に合う範囲内で、建物は大きければ大きい方が後々、部屋を計画しやすくなるので7mスパンで計画して余るようであれば8mスパンを混ぜるなどしておきます。
ここでのスパン割りはあくまでも仮なので、要求室の条件次第でいつでも自由に変えれるものだと思っておきましょう。
何もなしにスパン割りを考えるのも難しいので、たたき台として仮置きしたイメージです。
ポイント
法令と問題文の条件から建築面積、床面積がオーバーにならないよう注意!
4|要求室を各フロアに割り当てる
問題文に要求室が何回に計画すると記載されていればいいのですが、ほとんどの場合は記載されていないので、どの部屋を何回に配置するか決めていきます。
ここで先ほど仮で求めたスパン割りの場合に、要求室がそれぞれ何コマ必要になるか考えます。
7m×7mスパンだったら50㎡で1コマ、6m×7mスパンだったら40㎡で1コマなどです。
要求室の中には面積指定がなく「適宜」と書かれている部屋もありますが、その部屋で想定されている人数や席数などからおおよその面積を算出します。
エントランスホールなどは最低2コマ、受付やコインロッカーなどの求められる機能の数によっては4コマ程度見ておくと十分でしょう。
実際は要求室とは別に各階に廊下やコア部分などが存在するため、各階に2.5〜3コマ程度足しておくとより正確なコマ数が出ると思います。
吹き抜けや屋上庭園もコマ数を出して各階に足すのを忘れないようにしましょう。
ここで計算しているのは床面積ではなく、フロアごとの部屋の割り振りなので、各階必要なスペースの合計が同じくらいになるように計算していきます。
ポイント
吹き抜けや屋上庭園も忘れずに!
5|ボリュームチェック
エスキス用紙のマス目4つで1コマとし、寸法などを気にせず、上記で決定した要求室のフロア分けを入れることができるか検討していきます。
ここではフロアごとに要求室が入るかの検討をざっくりとするだけなので、細かく要求室ごとに面積や大きさの検討をする必要はありません。
小さいコマで検討しているので、面積まで検討しようとするとゴチャゴチャしてしまい、結果ミスにつながる可能性が高くなります。
ここで入らない場合などは、スパン割りを変更するなどの操作が必要になってきます。
とりあえず要求質が入りそうだなとなった段階で、早めに建築面積の確認をしておきましょう。
次の1/400に進んでから建築面積がアウトになっていることに気づくと大幅に手戻りが生じてしまいます。
スパン割りを変えている場合は、念のために斜線制限なども改めて確認しておくとミスが減ると思います。
ポイント
ボリュームチェックはなんとなく入りそう程度で止めておく
6|1/400での検討
ボリュームチェックも終われば、いよいよ1/400で詳細にプランを検討していきます。
エスキス用紙のグリッドを1目盛が2mとしてプランを練っていきます。
プランを考える際に、部屋名の他に面積なども書き入れておくと、問題文の条件に合致しているか確認しやすくなるのでおすすめです。
僕はこの段階でPSやDS、EPSなどの機械室も場所を決めておきます。
慣れてくると作図しながら詳細な検討を行うこともできるようになってきますが、慣れないうちはこの段階で詳細まで決めておくと作図の時に迷わなくて時間短縮につながります。
また、外構の計画も忘れないようにします。
駐車場や車寄せ、避難場必要な通路の確保など、計画に無理が生じないようにする必要があります。
最後にプランが完成したら、各回の床面積と建築面積の確認も忘れないようにしましょう。
面積は間違えると一発アウトになる可能性が高いので、何度も何度も確認することが合格へ近づくと思っています。
自分は大丈夫と思っていても何度も課題をやっていると間違えることがあるので、本試験で間違えないよう何重にもチェックするようになりました。
ポイント
PSやDSの位置なども考える
まとめ
今回は僕が設計製図試験に合格したときのエスキス手順を公開しましたが、いかがでしたでしょうか。
これだけチェックしていても間違えることがあるので、いかに間違えないで図面を書き上げた人から合格していく試験なのかわかると思います。
初受験の方も2回目、3回目の方も僕のエスキスのやり方を参考にしていただけると嬉しいです。
それではまた。