一級建築士の試験制度が令和2年から変更となっております。
変更されてから数年経過しているので、すでに知ってるよ!という方もいるかもしれませんが、改めて解説していこうと思います。
概要としては、緩和される方向の改正なので多くの人が多少なりとも恩恵を受ける内容となっています。
ポイントとしては大きく下の4つで、全体的に若い建築士を増やそうとしているのがわかります。
- 学校卒業後すぐに受験可能に
- 二級建築士の方はすぐに受験可能
- 実務経験は免許登録時までに必要
- 設計製図試験の受験タイミングが「5年のうち3回」に緩和
この改正によって今まで社会人しか受験できなかったものが、大学を卒業して大学院に通っている学生なども受験できるようになるため、学科試験の受験者数は令和2年から5,000人ほど増加しています。
改正後の学科試験の合格率は20%を超える高い年もあれば、令和3年度のように15%程度と低い年もあるのでデータがまだそろっていない状態です。
この記事を読むと、自分が一級建築士試験に申し込みができるのかがわかるようになっています。
それではどうぞ!
一級建築士学科試験を合格するまでのロードマップはこちらからどうぞ!
こんな方におすすめ
- 一級建築士試験を受けようと思っているけど自分に受験資格があるのかわからない
- 建築士試験の制度改正で何が変わった?
Contents
制度改正について
一級建築士の年齢割合は約40%が60歳以上で、逆に20代の建築士は約1%程度しかいないという超高齢化が問題となっていました。
受検者数も減少傾向にあったようで、これからの時代を作っていく人材を確保することを背景に建築士制度の見直しが図られたという経緯になります。
建築士に限らず、建築業界の高齢化が進んでいますので、このようにどんどん若手が活躍しやすいように制度が変わっていくのはとても良いことだと思います。
この制度改定後は学科試験合格者のうち20代の占める割合が60%を超えているので、確実に効果は出てきているようですね。
改正のポイント
制度改正によって受験資格が緩和されていますが、具体的にどのような人が新たに受験可能になったのか詳細を解説していきます。
学校卒業後すぐに受験可能に
以前は指定科目を修めて学校を卒業しても、申し込みする前に実務経験が必要だったのですが、制度改正により実務経験なしで申し込みできるように要件が緩和されています。
今までは受験をするのに実務経験が必要だったため、社会人しか受験者はいませんでしたが、制度改定後は大学を卒業していれば大学院在学中にも受験できるので、今学生の方は在学中に勉強するのも手かもしれませんね。
二級建築士を持っていればすぐに受験可能
同様に二級建築士の資格をお持ちの方も実務経験なしで申し込みできるように変更となっています。
二級建築士は持ってるけど実務経験が足りなくて一級にチャレンジするのが延びていた方も、受験できるようになりました。
工業高校を出てすぐ二級建築士に合格した方であれば、実務経験2年で二級建築士の登録をし、最短で20歳で一級建築士を受験することが可能になります。
実務経験はどこに行った?
国として若い一級建築士を増やしたいという背景があるので、学校を卒業してすぐの方にはいい状況ですね。
では、実務経験は完全に不要になって資格が簡単になったのかと言われるとそうではなく、試験合格後に実務経験を積めばいいということになりました。
実務経験の範囲拡大
試験に直接かかわる部分ではないので知らない方も多いかもしれませんが、実務経験としてカウントできる範囲が拡大されています。
今回拡大されたのは下の通りです。
論文の執筆が実務としてカウントされるようになったので、大学院在学中に試験に合格し、さらに論文を書いていれば社会人になるのと同時に免許を取得できるという人も出てくるかもしれません。
●建築物の設計に関する業務
- 基本設計策定に係る業務のうち、建築士事務所で行われる建築物の設計に関する図書の作成にかかわる業務(図書を作成するために必要となる直接的な業務を含む)
例:設計予見整理、事業計画検討など
- 建築士事務所で行われる標準的な設計を行う業務(単なるトレースである業務は除く)
例:事務所内部で使用する標準仕様の作成、BIM部品の作成など
●建築物の指導監督に関する業務
- 法令に基づく法人による建築工事の指導監督に関する業務(単なる記録に係るものは除く)
例:住宅瑕疵担保責任保険にかかる検査業務(保険検査)、住宅性能表示制度における性能評価業務(性能評価)、独立行政法人住宅金融支援機構の適合証明業務(適合証明)、建築物エネルギー消費性能適合性判定業務(省エネ適判)など
●建築士事務所で行われる建築物に関する調査、又は評価に係る業務
例:既存建築物の調査・検査、調査結果を踏まえた劣化状況等の評価、建築基準法第12条第1項に規定数定期調査・報告など
●以下のいずれも満たす工事
- 専門性が高く独自に施工図の作成が必要となるような工事
- 建築物の部分又は機能の一部に係る工事であって、建築物全体又は多くの機能(構造、設備、計画など)との関係が密接な工事
例:鉄骨工事、鉄筋工事、解体工事(4号建築物以外のものに限る)など
●建築行政
例:建築基準法等に係る個々の建築物の審査/検査/指導/解釈/運用等に係る業務、法律に基づき行う認定・審査・判定を行う業務、建築物に係る技術的基準の策定業務など
●住宅行政(建築物に直接関係する業務に限る)
例:建築物の性能向上等を図る補助金の審査業務、特定空家等の調査など
●都市計画行政(具体的ン建築物の整備等に係る業務に限る)
例:市街地再開発事業、土地区画整理事業など
●建築士試験に係る全科目を単横可能であり、かつ設計製図を担当する建築教育の教員業務
●建築物に係る研究(ただし査読を経て学会誌に掲載等されるなど、第三者による一定の審査されて公表等されるものに限る)
●建築士事務所で行われる既存建築物の利活用検討・維持保全計画策定の業務(ただし、建築物に直接関係する業務に限る)
上記のように実務範囲が拡大されましたが、適用されるのはあくまでも令和2年3月1日以降に行った業務だけです。
令和3年3月1日以前に上記業務を行っていたとしても実務経験にカウントできませんのでご注意ください。
設計製図試験についても緩和されています
以前は学科試験合格後3年間は学科試験免除で設計製図試験に臨めるようになっていました。
それが改正により3年から5年へと延長され、5年間で最大3回チャレンジできるようになりました。
妊娠出産などのライフプランや海外赴任などの仕事との兼ね合いで、学科試験は突破したけど連続で設計製図試験も受験することができなかった方はチャンスが広がりました。
また、5年のうち3回まで受験できるということは、学科試験に合格した都市の設計製図試験は飛ばしてもチャレンジできる回数に影響が無くなったので、1年ゆっくりと設計製図試験の準備をしてから受験するといった方も現れてきましたね。
いつから適用?
これらの改正は令和2年3月1日から適用されていますので、すでにこの運用にて試験も始まっております。
改正により受検可能になった方も多いと思いますので、改めてご自身が受験できるのかどうか、免許を申請するのに実務経験が足りているかどうかを確認してみてはいかがでしょうか。
まとめ
今回は一級建築士試験の制度改定について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
これからは在学中から一級建築士の勉強を始める方が増えてくると思うので、すでに社会人で実務にあたっている方も負けてられないですね。
より詳しく知りたい方は国土交通省のサイト(http://www.mlit.go.jp/report/press/house05_hh_000799.html)をご確認ください。
一級建築士合格に向けて頑張りましょう!
それではまた。