今回は一級建築士試験の設計製図試験に合格するためのロードマップを解説していきます!
こんな方におすすめ
- 今年設計製図試験を受験予定
- もう学科試験は受けたくない
- 一級建築士になりたい!
一級建築士は国が定める国家資格の一つで、大規模建築物を設計施工できるようになるため、難易度も高い部類に設定されています。
試験は学科の試験と設計製図の試験の2つがあり、どちらにも合格しないと一級建築士にはなれません。
詳しい一級建築士になる方法はこちらの記事にまとめています。
設計製図試験は例年10月の第2日曜日に試験日が設定されており、学科試験を突破しないと設計製図試験を受験することができないようになっています。
以前は、学科試験に合格後3年間しか学科試験をパスして設計製図試験を受けることができませんでしたが、近年制度が改定されて5年のうち3回までパス可能となりました!
この記事を読むと、一級建築士試験の設計製図試験に合格するためには何をしなければならないのかがわかるようになります!
それではどうぞ!
学科試験合格のためのロードマップはこちらからどうぞ!
Contents
一級建築士試験/設計製図試験の申込要綱
申込については学科試験と同様に4月上旬に行うことになります。
学科試験に合格している方は、合格したことを証明する通知書か受験番号が必要になりますので失くさないように取っておきましょう。
受験資格者
設計製図試験を受験することができるのは学科試験を合格した方のみとなります。
学科試験から受験する方は、その年の学科試験を合格すれば、自動的に設計製図試験にも受験することが可能となります。
学科試験の受験資格者についてはこちらの記事でもまとめています。
申込方法など
学科試験と同様に、インターネットで申し込みを行うことになります。
すでに令和6年度の申込期間は発表されており、令和6年4月1日(月)10:00~4月15日(月)16:00までとなっています。
例年4月上旬から4月中下旬ごろと決まっていますが、申込期間は2週間と短いので遅れないよう注意してください。
設計製図試験のみの受験でも受験料は17,000円となっており、学科試験を受けない分安くなるなどの措置はありません。
試験会場は47都道府県に設置されますが、自分がどこの試験会場になるかは受験票がダウンロード可能になる試験日の約2週間前までわかりません。
令和6年度は9月26日(木)頃に試験会場が公表されるようです。
受験票は郵送されてこないので、メール通知を見逃さないようにしないといけませんね。
一級建築士試験/設計製図試験のスケジュール
設計製図試験は学科試験の後に行われるので、例年10月の第2日曜日に試験日が設定されることが多いです。
学科試験合格後すぐに製図試験に挑む場合は勉強期間が短く大変ですが、5年のうち3回受けることができる制度を利用し、学科試験合格した翌年の設計製図試験から挑めば、勉強期間は十分確保できます。
また、その年の設計課題が発表されるのが7月下旬なので、それまでは図面の描き方や設備、エスキス方法などを学んでいくことになります。
令和6年の課題発表は7月26日(金)に公表される予定とのことです。
設計製図試験だけを受験する方は、資格学校にもよりますが、早いと2月頃から勉強を始めており、最初はエスキス方法の確立を目指して勉強しています。
初受験の方の勉強スケジュールはこちらからどうぞ!
初受験でも作図時間を3時間切るための方法はこちらにまとめています。
一級建築士試験/設計製図試験はどんな試験?試験時間や合格率、必要なものは?
一級建築士試験の設計製図試験は試験時間6時間30分で、A2の方眼紙に図面を4面と記述について描いていくことになります。
6時間30分と聞くと短く感じるかもしれませんが、実際は6時間30分ではギリギリな設定になっています。
最初に図面を描く際はトレースで12時間以上の時間がかかる方も多くいるので、試験時間の短さがわかるかと思います。
どんな内容の図面を描かなくてはならないのか詳しく解説していきます!
設計製図試験の試験内容
試験時間6時間30分で行わなければならない内容は下記の通りです。
- A2用紙に図面を4面(例:1階配置平面図、2階平面図、3階平面図、断面図)描く
- 図面の下に建築面積や建蔽率などの面積表を計算する
- A3の用紙に記述問題と問題によっては簡単な図を記載する
これらを全て完成させなければ採点さえしてもらえずに不合格(ランクⅣ)となります。
「ランクⅣ」などのランクの説明は次の章で詳しく解説していきます。
求められる図面ですが、近年の試験では1階敷地平面図、2階平面図、3階平面図、基準階平面図などの各階平面図と、建物の断面図を求められることがほとんどです。
過去の試験では梁伏図なども出題されたことがあるので、断面図と決めつけて臨まないようにしましょう。
参考までに2023年の課題と過去の課題まとめについてはこちらからどうぞ!
設計製図試験の合格率
ここ6年の設計製図試験の合格率と各ランクの割合は下のとおりです。
令和5年度の受験者数は10,509人、合格者数は3,473人で合格率は33%でした。
年度 | ランクⅠ(合格) | ランクⅡ | ランクⅢ | ランクⅣ |
---|---|---|---|---|
平成30年 | 41.4% | 16.3% | 16.5% | 25.9% |
令和元年(10月実施) | 36.6% | 3.0% | 29.2% | 31.3% |
令和元年(12月実施) | 34.2% | 5.3% | 31.9% | 28.6% |
令和2年 | 34.4% | 5.6% | 24.3% | 35.7% |
令和3年 | 35.9% | 6.3% | 26.9% | 30.9% |
令和4年 | 33.0% | 6.1% | 32.4% | 28.5% |
令和5年 | 33.2% | 2.1% | 22.1% | 42.6% |
令和元年は10月の試験日に台風が直撃し、一部会場の試験が12月に延期となったため2回記載しております。
近年の傾向を見ると合格であるランクⅠと一発不合格のランクⅣの割合が最も多く、次いでランクⅢ、ランクⅣの順に割合が多くなっています。
ランクⅡ以上が目立ったミスが無い図面と言われているので、ミスを無くせばかなりの確率で合格できることがわかります。
試験結果はランクだけ教えてもらえるので、不合格の場合は何がいけなかったのかをのちに分析するために、資格学校が復元図を描かせるところもあります。
設計製図試験を受験するためには何が必要?
設計製図試験は、学科試験と違い、シャーペン1本あれば受験できるというわけではありません。
専用に必要となるものは主に下のようなものがあります。
- 平行定規(製図板)
- 製図用シャーペン(太さによって使い分ける場合あり)
- 三角定規
- 細かい部分を消せる消しゴム
- VANCO
- 電卓
- マスキングテープ
最低限、これくらいはないと製図試験を乗り切るのが難しいと思います。
この中でもVANCOは三角定規とテンプレートが一体となったようなものであり、特に重宝するのでおすすめです!
ただし、昨年までは使用可能でしたが、厳しくなってきている風潮でいつ使用禁止にされてもおかしくないので、通常の三角定規も持っていた方がいいと思います。
おすすめの製図道具についてはこちらでも解説しています!
一級建築士試験/設計製図試験の特徴、どんな問題が出題されるの?
一級建築士試験の設計製図試験ではどんな問題が出題されるのか、その問題の特徴を解説していきます。
試験元から配られるものは、設計要項が記載された問題文と、エスキス用紙、図面を描くA2の用紙、記述問題を書くA3の用紙があります。
この章では、配布される問題用紙に何が記載されているのかなどを解説し、最後にランクによる採点方式を解説していきます。
問題用紙の構成
まず問題用紙には以下のことが記載されています。
Ⅰ.設計条件:設計をするにあたり求めることが記載されている
- 敷地及び周辺条件:敷地図や建蔽率、容積率など
- 建築物:階数、建築面積、要求室など
- その他の施設等:屋上庭園や屋外テラス席など
- 留意事項:ここに書いてあるものを間違えるとヤバいです!
Ⅱ.要求図書:回答用紙に何を描かなければいけないかが記載されています
- 要求図面:各図面に記載する必要のあるもの
- 面積表:建築面積や床面積など
- 計画の要点等:記述で聞かれる内容です
防火設備等の判例:毎年同じだと思われている部分が変わることがあります。要注意です。
この試験では、試験元が発注者、受験者が設計者として、発注者の希望をできるだけ取り入れ、法律に違反しないような建築物を設計していく必要があります。
ただし、仕事で行うようにデザインを凝り始めると途端に不合格になるので、デザインに凝ることはやめましょう。
毎年条件が同じような部分でも、少しずつ言い回しが変わっていたり、毎年記載されているものがなかったり、微妙に変化をしています。
勉強中に、ここはずっとこういうものだと思っていると、本番にそこが変えられて出題されると、途端に解けなくなってしまう可能性があるので、注意して問題文を読むようにしましょう。
問題文に隠されている重要ポイントはこちらの記事で解説しています。
また、設計製図試験の特徴として、事前に課題の発表が行われます。
課題の発表では下記の内容が発表されます。
- 課題名:令和3年度では「事務所ビル」など
- 要求図書:各階平面図や断面図、面積表など描かなければいけないものが発表されます
- 建築物の計画にあたっての留意事項:問題文にも記載されていますが、この試験で求められることが書かれているため、常に頭に入れて勉強していきましょう
- 注意事項:上記を満たして解答するようにと書かれています
この事前の発表によって、どんな用途の建築物を描かなければいけないのか、があらかじめ分かります。
また、他にも要求図面の平面図から建築物の階数がわかることがありますので、非常に重要な情報になります。
令和6年度は7月26日に発表予定とのことです。
設計製図
設計製図試験のメインである作図についてですが、問題文にある多くの条件を反映させながら描いていかなければなりません。
すぐに図面を書いていくのは無理だと思うので、エスキス用紙にスタディをして、プランをある程度固めてから解答用紙に作図をしていく事になります。
近年の傾向では1階配置平面図、2階平面図、3階(基準階)平面図の各階平面図3面と断面図を求められる事が多いです。
スパン割りの決め方についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
記述
記述問題は、自分が設計した図面について記述していく事になります。
よく聞かれる内容として、下記のようなものがあります。
- 建築物の構造について
- 地盤について
- 省エネについて
- 空調方式について
解答例の丸暗記ではなく、自分の設計した建築物との整合性がないといけないので、きちんと理解して書くようにしましょう!
また、記述と合わせて簡単なスケッチも求められる問題が増えてきたので、事前にどのようなスケッチを書くかある程度決めておきましょう。
記述対策はこちらの記事からどうぞ!
採点方式
学科試験のようにマークシートではないので、採点方式はどうなってるんだろう?
と思われる方も多いと思います。
しかも図面を描くという性質上、明確な正解があるわけではないので、より採点がわかりにくくなっています。
採点はランクによって分けられており、それぞれ以下のような区分になっています。
- ランクⅠ:合格!!
- ランクⅡ:目立ったミスはないが、ゾーニングが少し不十分
- ランクⅢ:一発アウトのミスはないが、細かなミスが多い or ゾーニングが不十分
- ランクⅣ:一発アウトの項目に触れてしまっている
ランクは4つに分けられていますが、合格なのはランクⅠだけです。
割合としては35%前後はランクⅠになりますが、本気で受けている人しかいない試験で、上位35%に入るのは至難の業といえます。
一応、試験元が出している採点基準のようなものはあるのですが、詳細に書かれているわけではないので、なぜ自分がそのランクなのか疑問に思うこともあると思います。
一級建築士試験/設計製図試験に合格するコツ
本気の人たちの中の上位35%が合格する試験にどうやって合格していくかですが、実は少しコツがあります。
- 法律違反を絶対しない
- とにかく問題文の条件を守る
- 廊下をまっすぐに通す
これらのコツを理解して、実践することができれば合格までもう少しです!
とはいえ、これらを完璧にこなすことがとても難しいので、常に意識して勉強するようにしましょう。
設計製図試験のポイントはこちらの記事でもまとめています!
法律違反を絶対しない
この試験では法律違反をするとランクⅣになる可能性が非常に高くなります。
例えば、建築面積や建蔽率をオーバーしたり、道路斜線に抵触したり、防炎ラインの書き忘れなど法令に違反するようなミスをしてしまうと、大幅減点は避けられないと思われます。
ただし、いろいろな所に法令違反ポイントがあるので、全てをうまく切り抜けるのはかなり難しいです。
そのため多くの人が何かしらの違反を犯し、ランクⅣやランクⅢになってしまっています。
ランクⅠになるには、このような法令違反をしないようにするのが近道といえますね。
とにかく問題文の条件を守る
法令を守ることができたら、今度は問題文の条件を守るようにしましょう!
ここで注意しなければならないのは、問題文に書かれている以上の条件を勝手に付与しないことです。
例えば、問題文に「住居は採光に考慮しした計画とする」と記載がある場合に、全室南向きじゃないとダメなんだと、理解するのは危険です!
採光に考慮すればいいので、東向きや西向きでも問題ない文章なのに、勝手に頭の中で南以外ダメという厳しい条件にしてしまったばかりに、エスキスがうまくいかない場合があります。
エスキス手順についてはこちらで詳しく解説しています。
廊下をまっすぐに通す
最後はできるだけ廊下をまっすぐ通すようにしましょう。
廊下がまっすぐ通っているとシンプルな動線になり、廊下以外の部分に部屋を割り当てていけばいいので、迷うことが少なくなっていきます。
また、避難動線に配慮したなども記述で書きやすくなるメリットもあります。
エスキス方法は別で詳しくまとめていますので、こちらもどうぞ!
コアと廊下がなかなか決められないという方はこちらもどうぞ!
一級建築士試験/設計製図試験の試験当日
設計製図試験の当日は正直、学科試験以上の緊迫感がありました。
僕は幸いにも2回目の試験で合格することができましたが、初年度は上で解説してきた試験の重要ポイントやコツを全く理解していなかったので、ズタボロでした。
この章では初受験時に大失敗した僕の経験と、それを踏まえて2回目の受験時にどういう心構えで臨んだかを解説していきます。
僕が試験当日に困ったことはこちらからどうぞ!
試験当日の心構え
初年度は勉強時間が圧倒的に足りていなかったことと、図面の枚数をとにかく描く事に集中しすぎて、肝心の問題文で聞かれている重要ポイントやエスキス方法が確立しないまま当日を迎えてしまいました。
当然、エスキスはまとまらないまま時間が過ぎていくし、周りは図面描き始めているという状況で焦り始めてしまい、エスキスも固まっていないのに見切り発車で作図をスタートしてしまいました。
その結果は完成させることはできましたが、ランクⅣで不合格でした。
これを踏まえて、2回目は早くからエスキスの練習を開始し、課題が発表される頃にはエスキスが苦手ではなくなっていました。
本番でもこれだけエスキスの練習したんだから、解けないはずがないという心持ちと、何がきても焦らないということを意識していました。
練習で身につけた自分のペースで本番も臨めるようにするには、焦らないことが重要です。
本番の試験では必ず毎年サプライズがあり、それで焦ってうまく力を発揮できない人が一定数いると思っています。
そのため、問題で何が出てきてもまずは焦らず落ち着いて対処する、ということを意識して試験に臨みましょう!
もし、問題文で訳わからないものが出てきた場合には、他の受験生も訳わからないと思っているはずです。
相対試験という特性上、そのような部分ではそこでの差はつきにくいので、他の部分で差が開かないようにいつも通り落ち着いてミスなく図面を完成させることに集中しましょう。
試験当日の持ち物
持ち物は今まで使い慣れた道具を持っていけば問題ありません。
ただし、本番の机の奥行きが狭い場合があるので、製図版についている脚が載らないことを想定し、枕は用意しておいた方が安心できると思います。
枕とは?
製図版の傾斜は30度までと決まっています。
通常は製図版についている脚を使用していると思いますが、机の奥行きによっては脚が机に乗らない場合があります。
その際に、ダンボールを三角形に折りたたんだものを使用して傾斜をとり、作図しやすくしますが、これが枕と呼ばれているものです。
また、近年持ち物についても厳しくなってきており、自立型の筆箱などもNGになっているので、事前に持ち込めるものを試験元のサイトで確認しておきましょう!
まとめ
今回は一級建築士試験の設計製図試験を合格するためのロードマップを解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
難しい学科試験を合格したのであれば、一級建築士までもう少しです!
試験の趣旨や合格するためのコツを意識して勉強していくようにしましょう!
合格するためのコツ
- 法律違反を絶対しない
- とにかく問題文の条件を守る
- 廊下をまっすぐに通す
このブログでは、設計製図試験も合格できるよう有益な情報を発信していきますので、ぜひ他の記事も見てみてください。
それではまた。